司法試験・予備試験 使用教材(完成版)

所有教材≠使用教材です。辞書として使用系は除きます。本当に使った教材だけを列挙します。

予備校の入門講座レベルの講義を消化していることが前提ですが、これらを100%理解すれば、司法試験合格には十分すぎるレベルの知識が手に入ると思います(逆にこれを超える量の教材を読んでいるのに合格しないのは、インプット・アウトプットのいずれかにテクニカルな問題があるためだと考えられます)。

読んでいただければわかると思いますが、私はほぼ完全なアウトプット中心主義者です。アカデミックな意味での習熟のためには基本文献の読み込みが必要なことには心の底から同意しますが、試験合格には演習をやりまくったほうが効果的です。基本書読みは受かってからできます(私はそうしました)。


予備論文合格・口述不合格時

短答

・LEC 「完全整理択一六法」シリーズ(一般教養除く)

・辰巳法律研究所 「肢別本」シリーズ

完拓を読んで肢別本を解く、というサイクルを3回も繰り返せば、少なくとも司法試験択一落ちは確実に防げると思います。予備は7科目あるので結構ハードな作業になりますが、一般教養で大変なことにならなければ大丈夫だと思います。

どちらかというと、私は完拓の方が点数アップにつながったと思っています。最初読んで「知らないな」「なんじゃこれ」と思ったところに印をつけて、理解して覚えるまで読みます。次に読むときに「あ、これはわかる」とおもったら、その印を消します。個人差はあると思いますが、3回これを繰り返せば、試験当日の朝に見直せる程度に読むべき量が減っていると思います。

論文(実務科目は口述も)

・全科目:辰巳法律研究所「えんしゅう本」シリーズ

巷で酷評されているえんしゅう本ですが、私のメイン教材です。確かに論証はしょぼかったり、ひどいときには間違ってたりします。事実認定の練習にもなりません。しかし、適当な基本書やGoogle先生の力をかりながら修正していけば、全然問題ありません。ただし行政法は除きます!!!!

むしろ、論証がしょぼいのは、このえんしゅう本のいいところだともいえます。この程度の論証なら覚えられますし、本番でも書けます。事実認定は過去問や答練で練習すれば十分です。また、余計な解説がごちゃごちゃ書いてないので、コンパクトで持ち運びやすい。これはノマドワーカー・ノマド受験生だった私にとってかなり大事でした。余白には、理解のためのメモや、まとめの図、網羅されていない関連論点の論証等を書きこんで、自分用にカスタマイズしました。

あと、論証部分とそれ以外の部分を色分けしてました。論パを兼ねている感じですね。このように、問題演習で論パを兼ねる事ができるので、論パの作成はいらないと思います。

使い方としては、一番最初(勉強をはじめたころ)はとにかく問題を読んですぐ答えを読んで、答えを暗記しました。2回目以降は、実際に答案構成するか頭のなかで答案構成して、解答例と照らし合わせました。わからなかった問題は、論点がわからなかったからできなかったのか、条文がわからなかったのか、を分析し、わかった問題も、論証が正確にできるかどうかを確かめていました。ちなみに、この使い方は、後に使うことになった学者系演習書でも同じでした(解答例が解説にかわるだけです)。

同じようなコンセプトのもの(解答例がついていて、論点の網羅性が高い旧試型の問題集)なら、シケタイでも問研でも論文の森でもなんでもいいと思います。

なお、憲法だけは他とちょっと違った使い方をする必要がでてきます。これについては記事を改めて書きたいと思います。

・LEC 論文の森 予備試験実務基礎科目

えんしゅう本には実務基礎科目がないので。使用法等は同じです。

・新司法試験、予備試験の過去問

全年度2回ずつくらい解きました。事実認定の練習と、本番の形式に慣れる為です。

・事例研究行政法

さすがにえんしゅう本行政法は薄すぎるので、こちらをメインに使いました。いまさらレビューの必要はないと思います。神です。解答例はないですが、解説が解答例みたいなものです。解答として使えるとことだけ線を引いて、あとはえんしゅう本と同じように使えば、読む量も全然多くありません。

・新問題研究要件事実、改訂紛争類型別の要件事実

司法研修所の教材です。要件事実はこれで大丈夫です。30講とかいりません。修習行く前に読めばいいです。

・基礎からわかる民事執行・民事保全

和田先生の本です。修習生にも人気です。ちなみにこの年は口述不合格でしたが、確実に刑事が要因です。

・刑事実務基礎ハンドブック2

他にチョイスがないと思います。


予備最終合格時

上記に加えて、

論文

・捜査法演習、刑事公判法演習(立花書房)

なんとなく刑訴に不安を感じて、購入。公判法演習は正直えんしゅう本以上のものを得られるかわかりません(学問的な意味ではもちろん得られます)が、捜査法演習は論証をリファインさせるのに非常に役に立ちました。強制処分の定義とか、如何にも予備校的なのはちょっとまずいと思います… ちなみに刑訴の成績は上がりました。

・憲法の急所

木村草太先生の本です。少なくとも、予備試験の論文憲法には非常に効果的でした。司法試験の憲法はちょっとどうなるかよくわからないので難しいですね…

口述

•民事訴訟第一審手続の解説

これもいわゆる白表紙です。手続系はこれでいいでしょう。

•えんしゅう本 民法、民訴、刑法、刑訴

結局、これをやっていったのが一番大きいです。二回目ははっきり言って余裕でした。


司法試験合格時

司法試験では民事系と倒産法の順位は結構よかったので参考にしただいていいと思います。刑事系は普通で、公法系は半端じゃないくらいできてませんでした。多分憲法がわけわかんないことになったのと、行政法があまりにもアッサリしすぎなのが要因でした。なのでとりあえず公法系はあまり参考にならないかもしれないです。

上記に加えて

•基本事例で考える民法演習(池田)1、2

これは神です。微妙に捻ってある問題を解くことにより地力がつくというのもそうですが、この本で取り上げられてる問題意識がそのまま出ることもあります。平成27の民法は結構そうだったと思います。

•刑法事例演習教材(佐伯他)

えんしゅう本のかわりにこれでもいいかもしれません。薄くてすぐ読めます。反対説は全面的にスルーして使ってました。

•解析民事訴訟(藤田)

あんまり意味はなかったかもしれません。一見分厚いですが試験に関係ありそうなとこだけ線を引けば、二回目以降はすぐ読めます。

•ロープラクティス商法

えんしゅう本の補強です。結果からいえばなくても受かったでしょうが、内容はこっちのほうが正確なので最初からこっちでもいいかもしれません。その場合は手形小切手を他でやることになりますが!

•えんしゅう本 倒産法

•倒産法演習ノート

•倒産法判例百選(最新のやつ)

•破産から民法が見える(小林)

•伊藤塾試験対策講座 倒産法

倒産法はこれだけやりました。シケタイは伊藤塾の講義受けた時だけつかって、その後結局全く読みませんでした。破産から~は気分転換に読んだんですが、民法の担保物権がわかるようになってすごくよかったです。担保物権出ませんでしたけど。

上二つを5回ずつくらい解いたと思います。百選は自分で論証に使えそうなとこに線を引いて、事案の概要とそこだけを3回くらい読みました。これで倒産法は余裕だと思います。

予備試験口述 不合格時再現(刑事)

恐らくかなり需要があるのではないかと思います。他にネット上で不合格再現とかみたことないので…ほんとはその年合格して、「いやあ、あれは落ちたと思ったんだよ」的な笑い話として公開しようとその時作ったんですが、全然笑い話じゃねーよ!

ということで、みなさんの口述対策の一助とすべく、今公開します。

私が予備口述に落ちた時の刑事系の再現です。民事系は60はあったと思うので、刑事系の点数はお察しください。

今見ても、これは落ちてもしょうがないレベルです。ひどすぎます。学部2年生でもわかるぞ、どうやって論文受かったんだコイツ、といった声が聞こえてくるようです。

しかし、口述で最初に間違えたりすると、本当に精神が崩壊して、普段なら当然分かるものも全然答えられなくなることがあり得ます。ちなみに私はかなり緊張に強いと思います。口述独特の雰囲気は味わったものにしかわかりません…!

これから受験されるかたは、うまく答えられない等のことがあってもあまり動じないように、そういったことを想定してイメージトレーニングされることをお勧めします。ちなみに、本気です。

では、阿鼻叫喚の地獄絵図をご覧ください。→(イタリック調は現在の私から、過去の私へのツッコミです。)


私「○室○番です。よろしくお願いいたします。」

主査「どうぞおかけください。私から質問します。」

私「はい」

割と優しそうな主査と怖そうな副査。。。

主査「今から事案をいうのでよくきいてください。

Aが被害者B宅に夜中に侵入し、現金とキャッシュカードを摂取しました。ところが、Bが目を覚ましたので、Aは反抗を抑圧するに足りる暴行をBに加えて逃走しました。

よろしいですか?」

私「はい」

(事後強盗かよ。。。苦手だわ。でも一応勉強しといたから大丈夫っしょ)

→(大丈夫じゃねえよ。)

主査「Bには何の罪が成立しますか。」

私「住居侵入罪と事後強盗罪です。」

主査うなずく

主査「事後強盗罪の構成要件はなんですか」

私「窃盗犯人が、逮捕を免れる等の目的で反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えて…財物奪取を…遂げることです。」

主査「逮捕を免れる等って、何があるの?」

私「えー、逮捕を免れる、財物を取り返されるのを防ぐ、あと罪跡を隠滅する目的です。」

・主査うなずく

(いまんとこいい感じだな。このままさっさと刑訴いってくれ。実体法はアカン)

→(実体法勉強しろよ。なんで論文受かったんだよお前)

主査「じゃあ、ちょっと事案を変えます。」

私「はい」

主査「キャッシュカードを盗んだ後、AがBを起こして暴行・脅迫を加え、キャッシュカードの暗証番号を聞き出した場合はどうですか?」

(…は?)

私「………えー…窃盗罪と…強要…罪の併合罪…が成立します…(消え入りそうな声)」

主査、は?みたいな顔する

主査「二項強盗罪は考えられませんか?」

(…はい?)

私「えー…二項強盗罪…は、考えられると思います。」

(よくわかんないから乗ってみるか)

(よくわかんないじゃないよ。なんでこんな重要判例知らないんだよ。)

・主査、また、は?みたいな顔する

主査「二項強盗罪の構成要件はなんですか。」

私「えー…えー…反抗を抑圧するに足りる暴行を加えて、利益??を移転させる??ことです」

(なんだっけ、ニュアンスはあってるんだが言葉がでてこない。やばい)

・私、テンパってくる

・主査、んーみたいな顔する。私さらにテンパる

主査「じゃあさ、その利益は、この事案でいうとなんなの?」

私「キャッシュカードの暗証番号…あ…」

主査「それ利益なの?」

・私、てんぱって、えー、利益、えーとか30秒くらいぶつぶついう

私「利益とは言えないと思います。すみません、条文を見てもよろしいでしょうか。」

主査「?どうぞ?」

・条文めくる「財産法上不法な利益を得」となっていることを確認。

私「すみません、やはり利益を得たとは言えないので、強盗罪は成立しないとおもいます。」

主査「え?君の中では何が問題になってるの?」

私「キャッシュカードの番号そのものを聞くことが利益を得たといえるかどうかです。」

主査「うん、じゃあ、強要罪とかなんとかいってたっけ?それが成立して強盗罪は成立しないってことね?」

このあと、利益にあたるかってとこで、キャッシュカードもってって引き出したら銀行に対する窃盗罪が成立する云々みたいな話した気がするけど忘れた。

私「…はい。」

主査「はい、わかりました。」

・副査、苦虫をかみつぶしたような顔をする。

強要罪はなんかおかしい気がしたけどよくわかりませんでした。


ここまでなら、まだ挽回できたと思います。

しかし、ここからの手続きゾーンが本当に、本当にまずい。

ちなみに、手続法ゾーンについては、もちろんその時の私も平常時であればなんなく正解に辿り着ける知識は持っていました。


(ここから挽回しないとマジでやばい)

主査「じゃあ、始めの事案でAが逮捕されて、令状をとってAの母親を立ち会わせてA宅を捜索したらAの部屋から覚せい剤がでてきました。この令状に基づいて覚せい剤を差し押さえることはできますか?」

私「できます」

・てんぱっていたため、事件が前の続きだという事を完全に忘れる。強盗事件やぞ!!

・主査、とうぜん、は?!みたいな顔する。

私「!!!失礼しました、撤回いたします。強盗の被疑事実に基づく令状なので、覚せい剤は差し押さえできません」

主査「そうだよね。ここでいう令状っていうのは、なんの令状ですか?」

私「捜索差押許可状です」

主査「うん。じゃあ、この覚せい剤を押収するためにはどんな手続が考えられますか。」

私「新たに覚せい剤取締法違反の被疑事実に係る捜索差押許可状を請求することが考えられます。」

主査「うん、まぁ、もう覚せい剤はみつかってるから差押許可状だよね。」

私「あ、はい」

・そりゃそーだ。

主査「ほかには?」

私「母親から任意に提出を受ける事が考えられます」

主査「母親は覚せい剤を提出できるの?Aじゃないのに?」

私「…えー…えー…」

主査「こういうのはだれが提出できるの?」

私「所有者、占有者、管理…者…のような規定になっていたと思うのですが…」

・主査、笑う

保管者ですな。

私「すみません、条文を参照してもよろしいでしょうか…」

主査「いやいや、あなたの知識を聞いてるんだから笑 条文見たらわかっちゃうでしょ笑」

・副査笑う

私「すみません、母親は提出できません」

主査「…はい。」

わけがわからない。できるにきまってる。緊張というのは恐ろしいです。

主査「じゃあ、できるとして(私、ここで過ちに気づく。いま蒸し返すのは危険と思いスルーする)、ここではどんな手続が行われますか?」

(どんな??どんなってなんだよ、意味がわからない)

私「え…母親から任意に提出を受けて、その、占有を取得します。」

主査「いやだから、どんな手続で占有を取得するのさ(怒)」

(だからどんなって何だよ!!)

私「え、と、これはりょうch…」

主査「領置だよね。」

(それが聞きたかっただけか。「なんという手続」でいいじゃん…)

私「はい。」

こんなとこで無駄に時間を使ったのはもったいなかったです

主査「じゃあ、強盗の令状で覚せい剤を差し押さえちゃったら、どうなる?」

私「その差押は違法になります」

主査「ということは?」

私「その覚せい剤の証拠能力が後の公判手続において否定されると思います。」

主査「なんで?」

私「令状主義の精神を没却する重大な違法があるといえ、今後の違法捜査の抑止の見地から証拠能力を否定することが相当であるためです」

主査「ふーん。」

なんか違和感があったけど、まぁ、大丈夫・・・?

主査「じゃあ、差押の後、Aに対する強制採尿令状を得て、それにより鑑定書を得た場合、この鑑定書の証拠能力は否定されますか?」

私「…されないとおもいます」

主査「なんで?」

・なんとなく大丈夫なことはわかるが、いざ、なんでと聞かれると、上手く説明できないことに気づき、焦る

(できろよ、説明。超基本論点だろうが。どんだけ論文知識忘れてんだよ)

私「えー、覚せい剤、覚せい剤が、覚せい剤、えー…」

・この後1分間くらい覚せい剤、覚せい剤とうわごとのように繰り返す。街でやったら職質されるとおもいます。

私「えー、強制採尿令状の発布を得たこと自体は適法なんでしょうか…?」

主査「それも含めて聞いてます(ちょっと怒)」

私「えー、覚せい剤の差押が違法なので…」

主査「あのさ、覚せい剤を差し押さえたから強制採尿したわけ?」

私「えー、えー、覚せい剤、えー…」

・また30秒くらい覚せい剤を連呼

主査「…覚せい剤を部屋でみつけたからじゃないの!?」

(何いってんだこいつ、同じことじゃ…!!)

私「あ!覚せい剤を発見したこと自体に違法はないので、強制採尿自体は適法です。なので、それにより得られた鑑定書も違法なものとして排除されません。」

主査「はい、私の方からは以上です。」

副査「私は特に」

主査「では、終わります。」

私「はい。ありがとうございました。」


どうです、地獄のようでしょう?

みなさんはこうならないように、実体法、手続法ともに、論文と短答の知識を思い出しときましょうね。執行保全とか、そういう口述プロパーよりそっちのほうが大事です。

司法試験・予備試験合格体験記簡易版

法律と全然関係ない大学院に通いながら、わけあって法律の勉強がしたくなり、LECの入門講座を受講。

勉強8か月程度で予備試験初受験 短答合格、論文不合格(200位くらい) 不合格は悔しかったが、目標順位には達していたので、複雑な気分でした。

その後、フルタイム勤務を始める。ほぼ完全無勉で受けた予備試験短答に運よく合格するも、結局殆んど勉強せずに、試験前と試験日に無理やり有休をとって一夜づけし、論文を受ける。案の定敗退(700位くらい)。自分には、労働者をやりながら勉強するというのは無理だと悟る。仕事だけなら大したことないのだが、仕事のストレスから遊んでしまうのだ。ずっと続けている趣味も現在に至るまでやめたことがないし、私には勉強と仕事だけの生活はとても無理なのだ。それと同時に、こんなゴミみたいな答案ばかり書いても700位なのか、と驚き、フリーに転向してちゃんと勉強すれば合格する、と確信する。

短答数か月前に退職し、ほそぼそとフリーで仕事をしながら、ほぼ勉強に専念。伊藤塾や辰巳の答練等を受講しました。短答を難なく突破し、論文もさくっと合格。しかし、まさかの口述不合格。さすがにこれは萎えました…口述を絶対になめてはいけません。普通に落ちます。

勉強法は変えず翌年受験し、論文合格、そして万全の口述対策(論文より勉強したかも知れません笑)をしてついに口述合格。嬉しかったです。

司法試験も、特に勉強法を変えず受験。結局答練は受講せず、TKCの模試を受けたのと、辰巳の模試を買って家で解きました。あと、伊藤塾の倒産法入門講座と、辰巳やアガルートのヤマ当て的な講座を受講しました。結果、無事一発で合格。ただし、結構順位は下がりました…おそらく、司法試験と予備試験では対策を少しかえた方がいいです。

今思うと、おそらく、最初の予備試験の時点で、運が良ければ司法試験まで合格するだけの法的知識はあったと思います。それ以降の勉強は、運が悪かろうがなんだろうが合格するための、どちらかというとテクニックや思考力を磨くものであったということです。このことから、司法試験に受かるためには8か月くらい(論文までだと11カ月くらい)で身につけることができる程度の知識量で充分であると考えています。