このブログに記載の勉強法等の再現性について

大変ご無沙汰しております。ふと思い立ってこのブログを久しぶりに開いてみたら、QLTSの記事にいくつかコメントをいただいており、嬉しくなりました。お返事できていなかったのが大変心苦しいですが…

それで気をよくして、久しぶりに何か投稿しようと思い筆(スマホ)をとりました。

二回試験の他、米国の司法試験など、受験・合格しているのに記事を書いていない試験がたくさんあるのですが、今回は一般的・総論的なことを書こうと思います。

このブログの記事を読んだ方が、「こんなにたくさん難関試験に合格するコイツには(頭の良し悪しは別として)何か特別な才能があるに違いない。こんなもんなんの参考にもならん。」といったことを考えるであろうことは想像に難くないところです。

この記事の趣旨は、特別な能力を持っていなくても、このブログに書いてある勉強法や試験の分析等を用いて、合格という結果を再現できるということ、すなわち私のメソッドに再現性があることを伝えることです。

(なお、私が受験・合格した試験のすべてに合格しているスーパー資格試験オタクはほぼ間違いなく世界に私しかいないと思いますので、見る人が見ればブログ主の特定は極めて容易だと思いますがそれはもう気にしないことにしました笑)

確かに、私には、一つだけ突出しているかもしれないと思う能力があります。それは、日本語でも英語でも、速く読めることです。一瞬みたら覚えられて、しかも一生忘れない、というような、マイク○スみたいな能力を持っているわけではないですし、マンガに出てくるような、パラパラパラ…うん、大体わかった、みたいな人間離れした速さで読めるわけでもありません。しかし、普通の人の2-3倍くらいの速さで文章を読んで、内容をおおよそ理解するができます。

この能力が資格試験に役立っていることは、まず間違いありません。しかし、どのように役立っているかというと、時間を節約できるということに尽きます。

他方、私には、自覚している突出した欠点があります。すごく飽きっぽく、長時間同じ活動をすることができません。

(突き詰めて考えたことも調べたこともないのでわかりませんが、もしかしたらこの特性と読む速さは表裏のような関係にあるのかもしれません。とにかくせっかちで堪え性がないので続きを速く読みたくなり、暫く読んでいると、飽きます。)

つまり、私は普通の人よりもかなり短い時間でインプットを行うことができるのですが、普通の人よりもインプットに時間をかけることができません。というか、顕著に少ない時間しかかけることができません。よほど興味があるトピックでなければ、すぐに飽きて苦痛に耐えられなくなってしまいます。基本的に、一日3時間を超えて集中して勉強することは困難ですし、3時間にとどめても、週に2-3日は休みがないと続けられません。

一方、アウトプットに関しては、問題文を読むのが速いので問題を早く解き始めることができることを除いて、私に特別な能力はありません。仕事での経験からは、起案はどうやらまあまあ速い方のようですが、私より速い人は私の周りだけでもいくらでもいますし、私が留学したアメリカのローススールの学生は全員私より速かったと思います(速すぎて引きました。)。

このことは、各試験における私の成績にも現れています。私が合格した試験の中で、私が合格者の中で突出して優秀な成績を修めたものはありません。

実は学業においても同様で、何かの科目や講義でクラスで一番になった経験は本当に人生に1度しかなく、学年で一番となると一度もなく、成績は公立中学にいてもアメリカのロースクールにいても、常に真ん中付近です。

私は別に突出して「頭が良い」わけではなく、基本的にはただ、読むのが速いだけなのです。

(そもそも「頭の良さ」というのをどう考えるべきかということには持論があり、実は上記の「頭の良さ」は私の考えるそれとは異なりますが、そこについては機会があれば別記事を書きたいと思います。)

幸運にも読むのが速いおかげで、普通に仕事をして生活しながら、家族との時間や趣味の時間も確保しつつ、留学したり、(これらの試験に合格したことが実際に役に立つかはさておき)さまざまな資格試験に合格することができました。また、勉強以外にもかなりの量の本(漫画を含みます笑)を読むことができています。これ自体が特別な能力を要さず再現可能かというと、不可能である可能性があることを認めざるをえません。

しかし、一つ一つの試験の具体的な勉強法は、私よりも時間はかかるかもしれないですが、再現可能です。私は速く読む能力を持っているだけなので、時間をかければ同じインプットをすることは必ず可能です。

そして、私がインプットにかけている時間は異常に少ないので、特別な能力を持たない人が同じ量のインプットを行っても、普通の勉強時間になるだけで、異常な勉強時間が要求されるということにはなりません。

このブログにある勉強法の肝は、私の能力とは関係ありません。怠け者で飽きっぽい私が、いかに効率よく、短時間で、できるだけ高い確率で一発で合格するかを追究してこらした工夫、そうして工夫を凝らして試験に受かることを繰り返すことでその工夫がさらに洗練されていった(いっている)こと、これが肝です。

このブログにある勉強法や個々の試験に関する分析は、試験の内容や傾向が変わってrelevanceを失った部分を除いては、特別な能力を持たない人が用いても、合格という結果を再現できると考えています。

補修所と修了考査について

たしか、会計士の修了考査の体験記も書くとどこかに書いた気がしますが、受けたのが結構前で、補修所や修了考査を取り巻く環境も結構かわっていると聞くので、もう誰の参考にもならないかな、ということで合格体験記としては御蔵にしようと思っています(それをいったら会計士合格体験記もそうだろって気もしますが。)。
自分の記録のためにも、スーパーざっくりバージョンだけここに残しておこうと思います。
合格体験記というより、当時の日記みたいな感じですね。

修了考査を受けたとき、私は監査法人を退職し、非常勤で監査をやったりフリーで会計アドバイザリーとか財務DDのお手伝いなんかをやったりしながら司法試験の勉強をしていました。修了考査に受かった年に予備試験に受かったので、時期としては予備試験の短答の少し前ということになります。

補修所ですが、大学在学中に会計士試験に受かったのに、補修所に行かなさすぎて単位が全然足りず、必要な単位を取得して補修所を卒業するのに6年くらいかかってしまいました。数年ぶりに出た補修所の演習科目みたいなので、たしか補修期?ごとに席が決まっていて、私の期の人は当然私しかおらず、しかも見た目は若いので、私がそこに座ると「えっアイツそんなベテランなの?!」みたいな感じでざわついててめちゃくちゃ恥ずかしかったです。しかも今は知りませんが、当時は演習みたいなの以外、基本的にはeラーニングを金を払って受講するしか単位を補う方法がなく、めちゃくちゃお金がかかりました…在学中に会計士に受かった方はめんどくさがらずに補修所に行きましょう!!!

なお、わざわざ在学中合格に限定するのは、監査法人勤務の場合、補修所がある日は仕事を定時で上がらせてもらえるので、補修所に行くインセンティブがあるのと異なり、在学中に補修所に行くのは純粋に苦痛でしかないためです。

修了考査ですが、当時は試験が年明け早々でした。年末休みだけTACの対策講座の動画(DVDだっけ?)見る+過去問を3年分くらい解く、という勉強だけしました。本番は税務でみんなが正解した課税売上割合を間違えるわ、会計は半分くらい何を聞かれているかすら全然わからんやらでさすがにこれはヤバイんじゃないかと思いましたが、運よく合格できました。監査の問題が監査実務を経験していれば比較的簡単だったことと、当時は非監査法人勤務の方が比較的多かったことから相対的な点数が浮いたんじゃないかな、と思います。
あと、完全に司法試験モードになっており、修了考査はまあ最悪落ちてもいいか…とリラックスして臨んだことが結果的にはよかったのかもしれません。でも、振り返って考えると、あそこで受かっていなかったら修了考査の勉強を年末にのんびりできるタイミングは二度となかったですね。本当に受かってよかった…

QLTS合格体験記

お久しぶりです。

少し前になりますが、イギリスのQLTS (Qualified Lawyers Transfer Scheme)という試験に合格しました。
あまり日本語での情報がない試験ですが、簡単にいうと、合格すれば他国の弁護士資格を持つ者がイングランド及びウェールズ*での法曹資格(Solicitor)を得ることができます。
*英国の法体系は結構複雑ですが、とりあえずイングランド及びウェールズ=英国というイメージで読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
なお、2021年9月からはイングランド及びウェールズの法曹資格へのルートは一元化され、SQE (Solicitor Qualification Exam)というQLTSと同形式の試験に一元化されます。おそらく、QLTS対策はSQE対策にそのまま妥当すると思います。ただし、SQEは、受験者の多くが英語非ネイティブのQLTSと異なりイギリス人も受けることになるので、受験者のレベルは上がり、結果としてQLTSよりも難しい試験になるのかもしれません。
試験は択一(MCT)と記述+口述(OSCE)に分かれており、MCTは日本でも受験することができます。私はMCTを日本で受験し、OSCEは(ほかに選択肢がないので)ロンドンで受験しました。

合格体験記が受験を考えられている方の参考になれば幸いです。
英語に自信があればチャレンジする価値は十分あると思います!

MCT(1月受験)
前年10月頃から対策を開始。QLTS Schoolという最大手?予備校のコースを受講。受講とはいっても、日本の予備校のようなインプット講義はなかったので、昼休みと深夜にテキストを読み、オンラインの演習問題を解いた。ちょうど仕事も忙しく、一日2~3時間くらいしか勉強時間を取れなかったので、MCTまでの勉強時間は180時間くらい。かなり少ない方だと思う。

テキストは一読だけして、あとはひたすら問題演習をした。全く勉強したことのない英米法をテキストを読むだけで深く理解するのは不可能だと思うので、割り切って問題演習で答えを機械的に覚えたほうがよいだろう(ほかの試験にもいえることだが、結果的に合格に必要なレベルの理解はそれで自然と得られるはず)。ただし、EU法(ブレグジットで科目から消えるかもしれないが…)は大陸法系なので、日本法の要領で理解がしやすく、テキストを読んで理解するだけで十分対応できた。
QLTS Schoolの問題演習で答えを見ずに正答率が7割を超えたのは2回だけだったが、本番は正答率76%くらいで合格した。本番の方が簡単だと思った記憶がある。
MCTに関しては、日本の弁護士であれば、英語さえ得意ならあまり苦労しないと思う。問題自体は司法試験(旧はもちろん、新も)の短答よりも素直で、問題演習を量こなしていればバシバシ肢が切れる。
問題はOSCEだろう。

OSCE (11月受験)
OSCEは年2回実施されており、4月だか5月だかに受けるつもりで出願したが、仕事が忙しいわ体調崩すわで全く勉強できず、受験を見送りキャンセルすることにした。キャンセル期限ぎりぎりだったので、受験料の何割かしか返ってこなかった。OSCEはめちゃくちゃ受験料が高いので悲しかった!!せめて飛行機キャンセル可能なやつにしといてよかった…
仕事も少し落ち着いた8月半ばくらいから対策を開始した。勉強時間は平日3時間+土日あわせて6時間で、合計250時間というところだろうか。もう少し早く始められていたら、もっといい対策ができたと思う。
QLTS SchoolはOSCE対策までコミコミのパックを取っており、10月頭くらいまでそれを使って勉強していたのだが、インプットばっかりで試験本番のイメージができないような教材になっていると感じた。チューターとやる模試みたいなの(Mock)がパックに含まれていたので何回か受けたが、ライティングも口述もボロボロだった。
これではまずいとおもっていろいろ調べたところ、OSCE SmartというOSCE対策専門の予備校を見つけた。日本の司法試験でいうとなんだろう…BEXAとか、私が受験したときくらいのアガルートみたいな感じだろうか。これにインプット講義(量少なめ)と模試が含まれていた。もう本番まであと1ヶ月というところだったが、思い切って全教材コミコミパックを購入した。なお、なかなかのお値段がするQLTS Schoolに比べれば、OSCE Smartは良心的な値段といえる。
QLTS SchoolのOSCEテキストのインプット量は膨大で、はっきりいって読み切るだけでも不可能だと思った。そこで、思い切ってこれらはやらず、OSCE Smartのレジュメ(全科目でたしか200ページもなかったような!)だけは完璧に覚え、あとはひたすら模試(Mock Exam)を受けまくって本番の感覚を磨くことにした。
この対策は結果的に当たりだった。OSCEは試験の構成自体がかなり独特である。たとえば、依頼人役の役者(!)と面談したあと、そこで得た情報に基づいて法的助言を記したレターを作成する、というのがある。おそらく、法的に難しい内容が出るというよりは、法的にはそこまで複雑でないが実務上ありそうなシチュエーションをどう処理するか、ということが問われている。
なお、そうはいっても、インプットの範囲が狭いので、当然本番はまったく知らん論点が出題されることもあった。受験後の感想としては「これはさすがにダメかもわからん」という感じだった(不合格だった予備試験口述よりよほど感触は悪かった)が、ふたを開けてみれば合格点63のところを74で受かっていたので、かなり出来はよかったということになる。
インプットに関していえば、一通り勉強した際に、「これは日本法の感覚で処理すればだいたい同じ処理になる」というところはもう復習せず、日本法とは異なるところ(例えばイギリスの不動産法は本当にわけがわからないことになっており、privity of contractだのprivity of estateだの日本法の感覚からすると全く意味がわからない概念が出てくる、とか、保釈の消極要件に新たに罪を犯す可能性があるとか、捜査段階で黙秘すると公判で不利益がある可能性がある*とか)のみ復習する、という方法が最善であるように思う。

*このブログは今のところは法律ブログではなく勉強ブログなので詳しくは述べませんが、ゴーン氏の件に端を発して、ツイッター等で、この規定について、誤解や不十分な理解に基づくと思われる法曹関係者等による言及が見られました。たとえば、初回の取調中にアリバイについて供述しなければハイそれまで、みたいな理解を前提にしていると思われる記載がありましたが、実際には取調べ後に、供述を書面にして捜査機関に提出することができます。

実際のE&W法上の根拠については、口述で正確に条文や判例を適示しなくても(多分)受かるし、ライティングの時はLexisとかのデータベースが使えるので覚えておく必要性は低い。
OSCEに関しては、かなりの英語力がないときついと思う。しかし、留学をすでに経験していたり、渉外案件を日常的に取り扱う弁護士であれば十分対応は可能と思われる。
英語がネイティブレベルでなければ、おそらく1,000時間くらいは対策にかかると思われるが、内容としては、上記で十分合格できると思う。

以上です。

公認会計士試験合格体験記

お久しぶりです。プライベートでいろいろと忙しく、更新する時間が取れませんでした。

今日は今年の司法試験最終日、そして予備試験の短答ですね。受験された皆さん、本当にお疲れ様でした。予備試験の方はあまり気を抜かずに論文の勉強に移る必要がありますが、今日くらいは飲みに行くなりなんなり楽しんで下さい!

さて、公認会計士の合格体験記も書いてみたいと思います。一つ重要な注意点としては、私が受かったときは今よりも合格率が高かったです。おそらく、今だと同じ勉強をしても受からない可能性が高いです。しかし、それは量の問題で、メソッドとしては間違ってなかったと思います。さすがに適当な勉強で受かるほど簡単ではなかったので…

では、書いていきます。

高校三年生、内部進学の学部選択の時期になった。私は弁護士になりたかったので、当然法学部を選択し、無事希望通り法学部への進学が決まった。

ある日、クラス会が行われることになった。その日は、私は授業が昼くらいに終わったが、選択授業の関係かなにかでクラス会は夜から行われることになった。さて、暇である。誰か誘ってカラオケでも行こうかと思って、同じクラスのOを誘ったら、断られてしまった。公認会計士の予備校の説明会に行くのだという。内部進学生向けに駅でパンフレットを配っていたのだそうだ。

公認会計士?なんかむずい試験らしいが、全然興味ねえな。そう思った。しかしいかんせん暇だし、他にカラオケに付き合ってくれるやつもいなさそうだし、なにより予備校の場所がクラス会の場所の近くだったので、Oともう一人Kという同級生についていくことにした。

説明会とはいっても、そのときは我々三人しかいなかった。そこで予備校の先生に、公認会計士になるとなにがいいのか、滔々と説かれた。これでかなり興味を持ってしまった。簿記二級講座を特別に無料で受けれるというので、大学1年生から司法試験の勉強をする気もなかったし、とりあえずやってみようということで、その無料講座に申し込んだ。

かくして、私の簿記の勉強は高校三年生の終わりからスタートした。とはいっても、週に一回くらい行って講義をDVDで観るだけだったが…

大学の法学部に高校から内部進学した私は、当然ロースクールに行くものだと考えていた。当時はまだ旧司法試験も残っていたが、さすがに受かる自信がなかった(今考えれば本気でやれば受かったかもしれない…とおもうが、後悔はしていない)。

しかし、実際に調べてみて衝撃を受けた。学費高杉。当時実家の経済状況が思わしくなく、親にローに行きたいと言ってみたら失笑されてしまった。最終的には行っていいと言ってくれたが、申し訳ない気持ちもあり、いろいろ悩んだ結果、ローには進学しないことにした。

私は、昔からサラリーマンにだけはなりたくなかった。理由は別の機会に書くかもしれない。とにかく、公認会計士になって、独立すれば好きなことができるし、そのあと弁護士になりたければ自分の金でローに行けばいいじゃないか、と考えるに至った。なお、多少異なる経緯を辿ったが結局おおよそその通りになった。なお、会計士の予備校代は親に頼み込んで払ってもらった。

このように公認会計士試験を受験すると本格的に決めたのは大学1年生の夏くらいだったと思う。そこから真面目に勉強をはじめた…ということはなく、大学サークルに入り、麻雀などに興じながら、相変わらずダラダラ予備校に通っていた。ペースは週2くらいに増えた。ここから大学二年生の6月くらいまでは、日商簿記1級対策に入り、簿記と管理会計だけを勉強した。つまり、1年目は計算しかやらなかったということになる。

大学二年生になると、 6月の簿記一級の試験は目前に迫っていた。この時点で、私は全く簿記ができなかった。講義はちゃんと消化していたが、聞いてわかった気になって復習をほとんどせず、というのを繰り返していたからだ。答練も一応受けていたが、それこそ2点とかいった点数はザラだった。

この状態では受かるわけはない。しかし私は気にしていなかった。簿記一級なんてどうでもよくて、大学3年の時に公認会計士試験にさえ受かればよいと思っていたからだ。

しかしここで、今から考えると僥倖としかいいようがない出来事が起こる。大学に入ってから付き合った彼女に振られたのだ。失恋して結構傷ついたし、何より時間がぽっかり空いたので、気を紛らわすためにとてつもない量の勉強をするようになった。とてつもないといっても一日10時間くらいで、受験生からしてみれば普通かもしれないが、あれほど集中して毎日長時間勉強したことは後にも先にもない。

基礎が全くできていなかった私は、まずテキストの例題を3回くらい解いた。できなかった問題はそれ以上解いた。問題集までやっていては試験に間に合わないと思い、簿記一級の過去問を5年分くらい買ってきて、答えを暗記するくらい何度も解いた。解いてテキストを読んで理解、という暇はなかったので、よくわからない問題はなにも考えずにとりあえず解き方を暗記した。何度も繰り返しているうちに不思議と理解できるようになった。

以上のようにしたら、なんと、受かってしまった。私は仲間内で簿記ができないことで有名であり、受かるわけがないと言われていた。しかも、私が通っていた予備校では簿記一級に大学二年で受かると三年で会計士に受かるというジンクスがあり、実際にその時受かった者は、全員翌年の会計士試験に合格した。

簿記一級合格に気をよくした私のモチベーションは俄然上がった。簿記一級直後から理論科目、選択科目の学習が始まった。私は暗記が得意だったので、読むだけで勉強できる理論科目は大好きだった。会計士試験の理論科目は司法試験と違って書く量が少なく、問われているのも主に知識なので、答案構成を繰り返す必要がなかった。今考えると企業法だけは答案構成をやったほうがいいとは思うが。

とにかく、予備校の授業にできるだけ遅れないこと、どんなにできなくても答練は受けること、これだけを考えて試験直前まで勉強した。とはいっても、大学の授業に全く出ていなかったので、サークルをやったり麻雀をやったりする時間はあった。学生とは幸せなものである。

相変わらず劣等生扱いではあったが、模試等では一応合格圏内に入っていた。相変わらず簿記や管理の答練(上級答練)ではひどい点数を連発していた。勉強時間は一日5時間くらいだったが、試験一ヶ月くらい前からは8時間くらいやっていたと思う。

そんなこんなで、大学三年生の5月、短答がやってきた。なお、前の年の短答も受験はしていたが、簿記と管理会計以外全くやったことがない状態で受かるわけがなく、当然落ちていた。本番の環境を知るという意味で、周りも結構受けていた。

私はかなりプレッシャーに強い方だが、始まってから30秒くらいは手が震えてマークできなかった。

私は短答模試の成績はそこそこよかったので、それなりに自信を持っていた。しかし、自己採点してみるとかなりギリギリだった。ギリギリなので論文の勉強をする気が起きず、一ヶ月遊び暮らしてしまった。

短答に合格したことを知り、相当焦った。選択科目と租税法も短答前からやってはいたのでそこは大丈夫だったが、理論科目の論証の再暗記と、計算の底上げが全然間に合っていなかった。一日10時間くらい勉強したが、論文二週間前にサークルの夏合宿に行ったりもした。なんだかんだで論文には3-4割受かるため、落ちることはないと思っていたからだ。

論文は上記の謎の自信があったため、殆ど緊張しなかった。しかし、最初の租税法で時計が壊れ、時計なしで解くことになった。あれは本当に焦った。なんとか時間内にわかるところを解き終えたが、いまでもたまに夢に見る。

企業法が早く終わり、最後の経営学の勉強をしようと思って途中退出したら、試験監督のおばちゃんに「本当に三日間お疲れ様。」と仏のような顔で言われた。もう諦めたと思われたんだろう。諦めてねーよ!と心の中で思ったことを覚えている。

試験後も合格を一切疑わなかったが、予備校の先生は絶対に落ちると思っていたらしい。合格祝賀会では「お前本当に受かったんだな。」と言われた上に、合格者の中で答練成績がワースト5ということで表彰された。

司法試験・予備試験 使用教材(完成版)

所有教材≠使用教材です。辞書として使用系は除きます。本当に使った教材だけを列挙します。

予備校の入門講座レベルの講義を消化していることが前提ですが、これらを100%理解すれば、司法試験合格には十分すぎるレベルの知識が手に入ると思います(逆にこれを超える量の教材を読んでいるのに合格しないのは、インプット・アウトプットのいずれかにテクニカルな問題があるためだと考えられます)。

読んでいただければわかると思いますが、私はほぼ完全なアウトプット中心主義者です。アカデミックな意味での習熟のためには基本文献の読み込みが必要なことには心の底から同意しますが、試験合格には演習をやりまくったほうが効果的です。基本書読みは受かってからできます(私はそうしました)。


予備論文合格・口述不合格時

短答

・LEC 「完全整理択一六法」シリーズ(一般教養除く)

・辰巳法律研究所 「肢別本」シリーズ

完拓を読んで肢別本を解く、というサイクルを3回も繰り返せば、少なくとも司法試験択一落ちは確実に防げると思います。予備は7科目あるので結構ハードな作業になりますが、一般教養で大変なことにならなければ大丈夫だと思います。

どちらかというと、私は完拓の方が点数アップにつながったと思っています。最初読んで「知らないな」「なんじゃこれ」と思ったところに印をつけて、理解して覚えるまで読みます。次に読むときに「あ、これはわかる」とおもったら、その印を消します。個人差はあると思いますが、3回これを繰り返せば、試験当日の朝に見直せる程度に読むべき量が減っていると思います。

論文(実務科目は口述も)

・全科目:辰巳法律研究所「えんしゅう本」シリーズ

巷で酷評されているえんしゅう本ですが、私のメイン教材です。確かに論証はしょぼかったり、ひどいときには間違ってたりします。事実認定の練習にもなりません。しかし、適当な基本書やGoogle先生の力をかりながら修正していけば、全然問題ありません。ただし行政法は除きます!!!!

むしろ、論証がしょぼいのは、このえんしゅう本のいいところだともいえます。この程度の論証なら覚えられますし、本番でも書けます。事実認定は過去問や答練で練習すれば十分です。また、余計な解説がごちゃごちゃ書いてないので、コンパクトで持ち運びやすい。これはノマドワーカー・ノマド受験生だった私にとってかなり大事でした。余白には、理解のためのメモや、まとめの図、網羅されていない関連論点の論証等を書きこんで、自分用にカスタマイズしました。

あと、論証部分とそれ以外の部分を色分けしてました。論パを兼ねている感じですね。このように、問題演習で論パを兼ねる事ができるので、論パの作成はいらないと思います。

使い方としては、一番最初(勉強をはじめたころ)はとにかく問題を読んですぐ答えを読んで、答えを暗記しました。2回目以降は、実際に答案構成するか頭のなかで答案構成して、解答例と照らし合わせました。わからなかった問題は、論点がわからなかったからできなかったのか、条文がわからなかったのか、を分析し、わかった問題も、論証が正確にできるかどうかを確かめていました。ちなみに、この使い方は、後に使うことになった学者系演習書でも同じでした(解答例が解説にかわるだけです)。

同じようなコンセプトのもの(解答例がついていて、論点の網羅性が高い旧試型の問題集)なら、シケタイでも問研でも論文の森でもなんでもいいと思います。

なお、憲法だけは他とちょっと違った使い方をする必要がでてきます。これについては記事を改めて書きたいと思います。

・LEC 論文の森 予備試験実務基礎科目

えんしゅう本には実務基礎科目がないので。使用法等は同じです。

・新司法試験、予備試験の過去問

全年度2回ずつくらい解きました。事実認定の練習と、本番の形式に慣れる為です。

・事例研究行政法

さすがにえんしゅう本行政法は薄すぎるので、こちらをメインに使いました。いまさらレビューの必要はないと思います。神です。解答例はないですが、解説が解答例みたいなものです。解答として使えるとことだけ線を引いて、あとはえんしゅう本と同じように使えば、読む量も全然多くありません。

・新問題研究要件事実、改訂紛争類型別の要件事実

司法研修所の教材です。要件事実はこれで大丈夫です。30講とかいりません。修習行く前に読めばいいです。

・基礎からわかる民事執行・民事保全

和田先生の本です。修習生にも人気です。ちなみにこの年は口述不合格でしたが、確実に刑事が要因です。

・刑事実務基礎ハンドブック2

他にチョイスがないと思います。


予備最終合格時

上記に加えて、

論文

・捜査法演習、刑事公判法演習(立花書房)

なんとなく刑訴に不安を感じて、購入。公判法演習は正直えんしゅう本以上のものを得られるかわかりません(学問的な意味ではもちろん得られます)が、捜査法演習は論証をリファインさせるのに非常に役に立ちました。強制処分の定義とか、如何にも予備校的なのはちょっとまずいと思います… ちなみに刑訴の成績は上がりました。

・憲法の急所

木村草太先生の本です。少なくとも、予備試験の論文憲法には非常に効果的でした。司法試験の憲法はちょっとどうなるかよくわからないので難しいですね…

口述

•民事訴訟第一審手続の解説

これもいわゆる白表紙です。手続系はこれでいいでしょう。

•えんしゅう本 民法、民訴、刑法、刑訴

結局、これをやっていったのが一番大きいです。二回目ははっきり言って余裕でした。


司法試験合格時

司法試験では民事系と倒産法の順位は結構よかったので参考にしただいていいと思います。刑事系は普通で、公法系は半端じゃないくらいできてませんでした。多分憲法がわけわかんないことになったのと、行政法があまりにもアッサリしすぎなのが要因でした。なのでとりあえず公法系はあまり参考にならないかもしれないです。

上記に加えて

•基本事例で考える民法演習(池田)1、2

これは神です。微妙に捻ってある問題を解くことにより地力がつくというのもそうですが、この本で取り上げられてる問題意識がそのまま出ることもあります。平成27の民法は結構そうだったと思います。

•刑法事例演習教材(佐伯他)

えんしゅう本のかわりにこれでもいいかもしれません。薄くてすぐ読めます。反対説は全面的にスルーして使ってました。

•解析民事訴訟(藤田)

あんまり意味はなかったかもしれません。一見分厚いですが試験に関係ありそうなとこだけ線を引けば、二回目以降はすぐ読めます。

•ロープラクティス商法

えんしゅう本の補強です。結果からいえばなくても受かったでしょうが、内容はこっちのほうが正確なので最初からこっちでもいいかもしれません。その場合は手形小切手を他でやることになりますが!

•えんしゅう本 倒産法

•倒産法演習ノート

•倒産法判例百選(最新のやつ)

•破産から民法が見える(小林)

•伊藤塾試験対策講座 倒産法

倒産法はこれだけやりました。シケタイは伊藤塾の講義受けた時だけつかって、その後結局全く読みませんでした。破産から~は気分転換に読んだんですが、民法の担保物権がわかるようになってすごくよかったです。担保物権出ませんでしたけど。

上二つを5回ずつくらい解いたと思います。百選は自分で論証に使えそうなとこに線を引いて、事案の概要とそこだけを3回くらい読みました。これで倒産法は余裕だと思います。

公認会計士試験のおすすめ選択科目

まず、統計学と経済学は、難しい上に他科目とのシナジーはほぼ0です。すでにこれらについて相当な知識を持っている受験生はこれらを取ることにより学習時間を節約できるのでいいと思いますが、それ以外の場合取るべきではないです。

そうすると、経営学と民法が残ります。これらは、一長一短だと思います。

経営学は、実は民法(会計士試験は財産法のみ)を超える膨大な範囲を持つと考えてもいいです。条文がないので、範囲が確定されないからです。例えば経営戦略論ひとつとっても、ポーターから現在にいたるまでとんでもない量の研究がされているわけで、出題の選択肢は無限大です。投資理論のところも、「マルチファクター・モデル」と出題範囲でさらっとひとまとめにされてますが、これCAPMに尾がついたようなものから数学的にハンパないことになってるものまでいっぱいあるんですけど…というかんじです。

とはいえ、訳のわかんないのが出たとしてもどうせみんなできないので、基本的に予備校で教わったものをやればいいわけで、この場合そんなに大変ではありません。ただし、予備校によって一番内容が違う科目なので、その予備校で扱ったところが出るかによって運命が決まってしまうという怖さもあります。

経営学は、管理会計とのシナジーが非常に大きいです。特に管理の講義で「これは経営学でやってね」と流されて、民法を選択してたりすると、人によっては一番苦手なゴードン・モデルらへんを独学しなければならなくなる可能性があります(さすがにそんなことは起きないとは思いますが…)。

民法は、範囲が明確でなにを勉強すればいいかも明確である、会計士試験で問われる内容は本当に超基礎的なところである、というメリットがあります。また、企業法のほとんどは会社法なので、シナジーが大きいです(ていうか、民法やらないで会社法やるって今考えると結構衝撃ですね)。

ただし、法律科目との相性がわるいと、法律科目が2つに増えて地獄をみることになります。例えば大学生で何の科目を選択するか迷っている方は、高校の時に数学と国語どっちが得意だったかによって、数学なら経営学、国語なら民法、と言うふうに判断してみるといい…かもしれません(経営学も半分は国語系ですが)。

どちらの科目も、先生がちゃんとしていないととんでもない講義を受ける可能性が大きい科目です(簿記と原価計算は、会計士試験合格者であれば、程度の差はあれ教えられると思います。財表、監査、租税も実務家ならそんなにひどいことにはならないでしょう)。自分が通う予備校の特性等も考慮して慎重に決めたいですね。

ちなみにちなみに、経営学で出る内容は、実務家としては超重要だと思います。受かることだけ考えたら、私の場合は民法のほうが良かったかも知れませんが、経営学を選択してよかったと今でも思っています。

公認会計士試験と司法試験、どっちが難しい?

私は、公認会計士試験の方が難しいと思います。

私の上記の感覚は私が個人的に計算が得意でないということにより説明できますが、以下の理由により、実質的にも公認会計士試験の方が難しいと考えます。

まず、合格率が違います。合格者が奇跡のゆとり世代と揶揄される2008年ですら、最終合格率は17.1%です。現在の傾向では10%あるかないかくらいです。これに対して、新司法試験の合格率はどんなに低くても20%を超えます。

これに対しては、司法試験受験者は予備合格者を除いて法科大学院を出ているため本気度とレベルが高いとの反論が予想されますが、昨今の会計士試験合格者の就職状況等をみても会計士試験を受ける人の本気度が低いという事はないと思います。

次に、問われている内容が、会計士試験は単純に激ムズです。

司法試験では、それぞれの科目で題材となる法律について、極論をいえば学部レベルの知識をもっていれば十分です。時間内に、好まれるフォーマット通りに書けるかは別として、経験ある実務家であれば余裕で解答できるレベルです。

これに対して、会計士試験の内容はいかれてるんじゃないかと思うくらい難しいです。財務会計論と管理会計論については、まともに解ける(というか内容が分かる)実務家は稀でしょう。特に財務会計論は異常です。

ようは、単純に、学問体系の中での要求レベルが会計士試験の方が高いということです。みんなにとって難しいなら、相対試験である以上難しさは変わらないと言われそうですが、ここまで難しいとインプット段階での理解がむずかしくなり、早い段階で挫折する可能性が高くなります。

これは両方経験した人にしかわからないと思いますし、もしかしたら私だけなのかも知れませんが会計士試験を経験すると、「解ける」認定のハードルがだいぶ下がると思います。論文式本試験レベルだと、

1/4は全く意味が分からないから飛ばす

1/4はなんとなくわかるかーもしれない

残り1/2は何の問題かはわかるが計算が合ってる自信まったく無し

という具合になる(ちなみに、全科目これなら多分普通に受かります)ので、半分くらいわかると「解ける」と認定するようになります。

なお、以上は公認会計士試験と司法試験のどっちが「難しいか」に関する私の感想であり、どっちが「大変か」はまた別の話です。

予備試験口述 不合格時再現(刑事)

恐らくかなり需要があるのではないかと思います。他にネット上で不合格再現とかみたことないので…ほんとはその年合格して、「いやあ、あれは落ちたと思ったんだよ」的な笑い話として公開しようとその時作ったんですが、全然笑い話じゃねーよ!

ということで、みなさんの口述対策の一助とすべく、今公開します。

私が予備口述に落ちた時の刑事系の再現です。民事系は60はあったと思うので、刑事系の点数はお察しください。

今見ても、これは落ちてもしょうがないレベルです。ひどすぎます。学部2年生でもわかるぞ、どうやって論文受かったんだコイツ、といった声が聞こえてくるようです。

しかし、口述で最初に間違えたりすると、本当に精神が崩壊して、普段なら当然分かるものも全然答えられなくなることがあり得ます。ちなみに私はかなり緊張に強いと思います。口述独特の雰囲気は味わったものにしかわかりません…!

これから受験されるかたは、うまく答えられない等のことがあってもあまり動じないように、そういったことを想定してイメージトレーニングされることをお勧めします。ちなみに、本気です。

では、阿鼻叫喚の地獄絵図をご覧ください。→(イタリック調は現在の私から、過去の私へのツッコミです。)


私「○室○番です。よろしくお願いいたします。」

主査「どうぞおかけください。私から質問します。」

私「はい」

割と優しそうな主査と怖そうな副査。。。

主査「今から事案をいうのでよくきいてください。

Aが被害者B宅に夜中に侵入し、現金とキャッシュカードを摂取しました。ところが、Bが目を覚ましたので、Aは反抗を抑圧するに足りる暴行をBに加えて逃走しました。

よろしいですか?」

私「はい」

(事後強盗かよ。。。苦手だわ。でも一応勉強しといたから大丈夫っしょ)

→(大丈夫じゃねえよ。)

主査「Bには何の罪が成立しますか。」

私「住居侵入罪と事後強盗罪です。」

主査うなずく

主査「事後強盗罪の構成要件はなんですか」

私「窃盗犯人が、逮捕を免れる等の目的で反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を加えて…財物奪取を…遂げることです。」

主査「逮捕を免れる等って、何があるの?」

私「えー、逮捕を免れる、財物を取り返されるのを防ぐ、あと罪跡を隠滅する目的です。」

・主査うなずく

(いまんとこいい感じだな。このままさっさと刑訴いってくれ。実体法はアカン)

→(実体法勉強しろよ。なんで論文受かったんだよお前)

主査「じゃあ、ちょっと事案を変えます。」

私「はい」

主査「キャッシュカードを盗んだ後、AがBを起こして暴行・脅迫を加え、キャッシュカードの暗証番号を聞き出した場合はどうですか?」

(…は?)

私「………えー…窃盗罪と…強要…罪の併合罪…が成立します…(消え入りそうな声)」

主査、は?みたいな顔する

主査「二項強盗罪は考えられませんか?」

(…はい?)

私「えー…二項強盗罪…は、考えられると思います。」

(よくわかんないから乗ってみるか)

(よくわかんないじゃないよ。なんでこんな重要判例知らないんだよ。)

・主査、また、は?みたいな顔する

主査「二項強盗罪の構成要件はなんですか。」

私「えー…えー…反抗を抑圧するに足りる暴行を加えて、利益??を移転させる??ことです」

(なんだっけ、ニュアンスはあってるんだが言葉がでてこない。やばい)

・私、テンパってくる

・主査、んーみたいな顔する。私さらにテンパる

主査「じゃあさ、その利益は、この事案でいうとなんなの?」

私「キャッシュカードの暗証番号…あ…」

主査「それ利益なの?」

・私、てんぱって、えー、利益、えーとか30秒くらいぶつぶついう

私「利益とは言えないと思います。すみません、条文を見てもよろしいでしょうか。」

主査「?どうぞ?」

・条文めくる「財産法上不法な利益を得」となっていることを確認。

私「すみません、やはり利益を得たとは言えないので、強盗罪は成立しないとおもいます。」

主査「え?君の中では何が問題になってるの?」

私「キャッシュカードの番号そのものを聞くことが利益を得たといえるかどうかです。」

主査「うん、じゃあ、強要罪とかなんとかいってたっけ?それが成立して強盗罪は成立しないってことね?」

このあと、利益にあたるかってとこで、キャッシュカードもってって引き出したら銀行に対する窃盗罪が成立する云々みたいな話した気がするけど忘れた。

私「…はい。」

主査「はい、わかりました。」

・副査、苦虫をかみつぶしたような顔をする。

強要罪はなんかおかしい気がしたけどよくわかりませんでした。


ここまでなら、まだ挽回できたと思います。

しかし、ここからの手続きゾーンが本当に、本当にまずい。

ちなみに、手続法ゾーンについては、もちろんその時の私も平常時であればなんなく正解に辿り着ける知識は持っていました。


(ここから挽回しないとマジでやばい)

主査「じゃあ、始めの事案でAが逮捕されて、令状をとってAの母親を立ち会わせてA宅を捜索したらAの部屋から覚せい剤がでてきました。この令状に基づいて覚せい剤を差し押さえることはできますか?」

私「できます」

・てんぱっていたため、事件が前の続きだという事を完全に忘れる。強盗事件やぞ!!

・主査、とうぜん、は?!みたいな顔する。

私「!!!失礼しました、撤回いたします。強盗の被疑事実に基づく令状なので、覚せい剤は差し押さえできません」

主査「そうだよね。ここでいう令状っていうのは、なんの令状ですか?」

私「捜索差押許可状です」

主査「うん。じゃあ、この覚せい剤を押収するためにはどんな手続が考えられますか。」

私「新たに覚せい剤取締法違反の被疑事実に係る捜索差押許可状を請求することが考えられます。」

主査「うん、まぁ、もう覚せい剤はみつかってるから差押許可状だよね。」

私「あ、はい」

・そりゃそーだ。

主査「ほかには?」

私「母親から任意に提出を受ける事が考えられます」

主査「母親は覚せい剤を提出できるの?Aじゃないのに?」

私「…えー…えー…」

主査「こういうのはだれが提出できるの?」

私「所有者、占有者、管理…者…のような規定になっていたと思うのですが…」

・主査、笑う

保管者ですな。

私「すみません、条文を参照してもよろしいでしょうか…」

主査「いやいや、あなたの知識を聞いてるんだから笑 条文見たらわかっちゃうでしょ笑」

・副査笑う

私「すみません、母親は提出できません」

主査「…はい。」

わけがわからない。できるにきまってる。緊張というのは恐ろしいです。

主査「じゃあ、できるとして(私、ここで過ちに気づく。いま蒸し返すのは危険と思いスルーする)、ここではどんな手続が行われますか?」

(どんな??どんなってなんだよ、意味がわからない)

私「え…母親から任意に提出を受けて、その、占有を取得します。」

主査「いやだから、どんな手続で占有を取得するのさ(怒)」

(だからどんなって何だよ!!)

私「え、と、これはりょうch…」

主査「領置だよね。」

(それが聞きたかっただけか。「なんという手続」でいいじゃん…)

私「はい。」

こんなとこで無駄に時間を使ったのはもったいなかったです

主査「じゃあ、強盗の令状で覚せい剤を差し押さえちゃったら、どうなる?」

私「その差押は違法になります」

主査「ということは?」

私「その覚せい剤の証拠能力が後の公判手続において否定されると思います。」

主査「なんで?」

私「令状主義の精神を没却する重大な違法があるといえ、今後の違法捜査の抑止の見地から証拠能力を否定することが相当であるためです」

主査「ふーん。」

なんか違和感があったけど、まぁ、大丈夫・・・?

主査「じゃあ、差押の後、Aに対する強制採尿令状を得て、それにより鑑定書を得た場合、この鑑定書の証拠能力は否定されますか?」

私「…されないとおもいます」

主査「なんで?」

・なんとなく大丈夫なことはわかるが、いざ、なんでと聞かれると、上手く説明できないことに気づき、焦る

(できろよ、説明。超基本論点だろうが。どんだけ論文知識忘れてんだよ)

私「えー、覚せい剤、覚せい剤が、覚せい剤、えー…」

・この後1分間くらい覚せい剤、覚せい剤とうわごとのように繰り返す。街でやったら職質されるとおもいます。

私「えー、強制採尿令状の発布を得たこと自体は適法なんでしょうか…?」

主査「それも含めて聞いてます(ちょっと怒)」

私「えー、覚せい剤の差押が違法なので…」

主査「あのさ、覚せい剤を差し押さえたから強制採尿したわけ?」

私「えー、えー、覚せい剤、えー…」

・また30秒くらい覚せい剤を連呼

主査「…覚せい剤を部屋でみつけたからじゃないの!?」

(何いってんだこいつ、同じことじゃ…!!)

私「あ!覚せい剤を発見したこと自体に違法はないので、強制採尿自体は適法です。なので、それにより得られた鑑定書も違法なものとして排除されません。」

主査「はい、私の方からは以上です。」

副査「私は特に」

主査「では、終わります。」

私「はい。ありがとうございました。」


どうです、地獄のようでしょう?

みなさんはこうならないように、実体法、手続法ともに、論文と短答の知識を思い出しときましょうね。執行保全とか、そういう口述プロパーよりそっちのほうが大事です。

司法試験・予備試験合格体験記簡易版

法律と全然関係ない大学院に通いながら、わけあって法律の勉強がしたくなり、LECの入門講座を受講。

勉強8か月程度で予備試験初受験 短答合格、論文不合格(200位くらい) 不合格は悔しかったが、目標順位には達していたので、複雑な気分でした。

その後、フルタイム勤務を始める。ほぼ完全無勉で受けた予備試験短答に運よく合格するも、結局殆んど勉強せずに、試験前と試験日に無理やり有休をとって一夜づけし、論文を受ける。案の定敗退(700位くらい)。自分には、労働者をやりながら勉強するというのは無理だと悟る。仕事だけなら大したことないのだが、仕事のストレスから遊んでしまうのだ。ずっと続けている趣味も現在に至るまでやめたことがないし、私には勉強と仕事だけの生活はとても無理なのだ。それと同時に、こんなゴミみたいな答案ばかり書いても700位なのか、と驚き、フリーに転向してちゃんと勉強すれば合格する、と確信する。

短答数か月前に退職し、ほそぼそとフリーで仕事をしながら、ほぼ勉強に専念。伊藤塾や辰巳の答練等を受講しました。短答を難なく突破し、論文もさくっと合格。しかし、まさかの口述不合格。さすがにこれは萎えました…口述を絶対になめてはいけません。普通に落ちます。

勉強法は変えず翌年受験し、論文合格、そして万全の口述対策(論文より勉強したかも知れません笑)をしてついに口述合格。嬉しかったです。

司法試験も、特に勉強法を変えず受験。結局答練は受講せず、TKCの模試を受けたのと、辰巳の模試を買って家で解きました。あと、伊藤塾の倒産法入門講座と、辰巳やアガルートのヤマ当て的な講座を受講しました。結果、無事一発で合格。ただし、結構順位は下がりました…おそらく、司法試験と予備試験では対策を少しかえた方がいいです。

今思うと、おそらく、最初の予備試験の時点で、運が良ければ司法試験まで合格するだけの法的知識はあったと思います。それ以降の勉強は、運が悪かろうがなんだろうが合格するための、どちらかというとテクニックや思考力を磨くものであったということです。このことから、司法試験に受かるためには8か月くらい(論文までだと11カ月くらい)で身につけることができる程度の知識量で充分であると考えています。

資格試験合格のために必要な視点

ようは、「何を」「どうやって」習得するか、ということです。

「どうやって」の部分には、正解はないのかもしれません。しかし、できるだけ少ない労力で最大限の効果を上げたい、というのが多くの方に共通する考えではないでしょうか。

「何を」、つまり使用教材の部分は、ある程度正解があると思います。合格者等の勉強法を聞くときに参考にすべきなのは、この「何を」の部分だと思います。

必要最低限の教材を何度も繰り返し使用する、というのが私が考えるもっとも効率的な学習法です。公認会計士試験の世界は特殊なので、多くの場合教材は完全に予備校に依存することになってしまいますが、それ以外の試験では、教材を自分でコントロールできます。

長年合格されない方や、失礼ながら、この人は落ちるだろうな、と思ってしまう方の多くに共通しているのが、必要最低限の学習量を実際よりかなり多く見積もっていることです。司法試験については特にそれが顕著です。

例えば、私は、倒産法以外の判例百選を勉強の中核に据えたことはありません。一度暇つぶしに読んで、あとは、特定の判例について調べたいときに辞書として使っていました(それも3回くらいしかありませんでしたが)。判例百選掲載判例をマスターするためには、なにも判例百選を読む必要がないからです。私に言わせれば、あんなものを解説までマスターしようとしたら人生が何回あっても足りません。暇な大学生で、かつ、勉強以外何もしなくてもいいのであればそれでもいいでしょうが、社会人では絶対に無理ですし、趣味を続けたい等いろいろあると思います。

回りくどくなりましたが、常に、「これだけやれば受かる」という教材リストの完成を一つの目標にすべきだと思います、ということです。私のリストは、とりあえず司法試験・予備試験については後に公開します。多くの人にとって、少なすぎて驚く量だと思います。